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ケアラー支援は次のフェーズへ― 川越市は条例制定に踏み出すべきです ―

令和5年12月議会にて、「ケアラー支援の今後について」一般質問を行いました。私がケアラー支援について取り上げるのは、令和3年の初登壇以来、今回で3度目となります。特に今回は、国が重点施策として位置づけているヤングケアラー支援の集中取組期間(令和4~6年度)の最終年度にあたり、その成果と課題、そして川越市の取り組みの現状と今後の方向性を確認する重要な質問となりました。

ヤングケアラー支援、川越市の実態は?

まず、川越市が実施したヤングケアラーの実態調査について確認しました。市立小・中・高校・特別支援学校の児童生徒を対象にしたアンケートでは、「家庭内でケアをしている」と回答した生徒の割合は7.3%。これは約14人に1人の割合であり、国の調査(約15人に1人)とほぼ同じ水準です。

また、介護保険関連の在宅介護実態調査では、回答のあった526世帯のうち8世帯にヤングケアラーが存在しているとされ、1.5%という結果になりました。対象者や方法の違いにより数字に差はありますが、市内にも確実にヤングケアラーが存在しているという事実が浮き彫りになりました。

制度のすき間にあるヤングケアラーの存在

質問の中でも強調しましたが、現在の福祉制度は「家族の協力ありき」で設計されています。介護を担う家族の存在を前提にサービスが設計されており、その影でケアを担う子どもたちは制度の網からこぼれがちです。

支援を必要とする方が障がい福祉・高齢福祉・児童福祉のいずれに該当するかによって、関係する部署や対応も変わります。そのため、子どもを支援するためにも、全庁的かつ横断的な体制整備が欠かせません。

支援策は各自治体に委ねられている

国はヤングケアラー支援について、多職種・多機関連携による「支援マニュアル」を作成していますが、具体的な基準や施策は各自治体の実情に委ねられています。つまり、地域の実態に即して柔軟に対応できるかどうかが問われているのです。

川越市においても、庁内の関係部署で調査結果を共有し、支援策を検討する会議が行われています。また、地域の福祉機関や学校、社会福祉協議会などとのネットワーク構築に取り組んでいくと答弁をいただきました。

これは前向きな一歩ですが、私は「これまでと同じやり方」だけでは限界があると考えています。

条例制定で川越市の意思を示すべき

全国では、ヤングケアラーやケアラー支援に関する条例の制定が進みつつあります。令和5年11月時点で、全国で21の自治体が条例を施行しており、そのうち4件は埼玉県内の市です。特に入間市や上尾市では、対象を明確にした条例を制定しており、地域の実情に即した先進的な取り組みが見られます。

川越市はこれまで「県の条例があるから市独自の条例は必要ない」という姿勢を取ってきました。しかし過去には、埼玉県が犯罪被害者等支援条例を制定したのち、川越市でも市独自の条例(犯罪被害者等支援条例)を制定した例があります。

その制定理由は、「市民にとって身近な基礎自治体として、相談や支援が受けられる体制が必要であるため」とのこと。これはそのまま、ケアラーやヤングケアラー支援にも当てはまる考え方ではないでしょうか。

条例は“旗印”になる

条例を制定することには、市の基本方針や政策の方向性を対外的に示すという大きな意味があります。ケアラーやヤングケアラーの存在を社会全体で認識し、支えるための旗印として、条例の制定は重要です。

現に、他市での支援策には、支援員の家庭訪問や家事支援、さらには金銭的支援(月5,000~15,000円の応援金)など、条例が施行されたことで新たな取り組みが生まれています。

「条例は想定していない」という市の答弁に対して

私の質問に対し、市の答弁は「県の条例に基づいて支援を進めているため、市独自の条例制定は想定していない」とのことでした。しかし、これは納得できる答弁ではありません。犯罪被害者支援条例のときは「被害者が身近に相談できるために」条例を制定したのに、ケアラーについてはなぜ同様の判断ができないのでしょうか。

私は、ケアラーやヤングケアラーを社会が支えるという理念を、条例という形で川越市として明確に示すべきだと考えます。

【まとめ】条例制定に向けて、今こそ一歩を

今回の一般質問を通じて、以下のようなポイントを再確認しました。

  • 川越市内でも国と同様の割合でヤングケアラーが存在している

  • 実態調査の結果は庁内で共有され、支援策の検討が進められている

  • 国の方針では、地域の実情に即した支援を求めている

  • 他市では条例制定を機に、より具体的な支援策が実施されている

  • 川越市でも、独自条例の制定経験があり、今回も同様にできるはず

私は、市民の一人ひとりが安心して暮らせるまちをつくるために、「条例を通じてケアラー支援の姿勢を明確に打ち出すべき」だと考えています。今回の質問を機に、行政としての前向きな姿勢を、さらに進めていただくよう、引き続き働きかけてまいります。

今後も、ケアラー支援の強化を求めるとともに、制度の隙間に置かれている方々に光が当たる社会を目指して、議会での活動を続けてまいります。

以上、令和5年12月議会での一般質問のご報告でした。

 
 
 

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