川越市場の未来を考える ― 物流環境の変化と地域経済の要として
- 真史 倉嶋
- 8月7日
- 読了時間: 3分
はじめに
令和5年9月議会において、「卸売市場の今後について」一般質問を行いました。川越市は商業・工業・農業のバランスが取れた産業構造を持ち、埼玉県西部の経済をリードしてきました。古くは新河岸川の舟運、明治以降の鉄道、近年では圏央道の開通など、川越は歴史的に物流の拠点として発展してきました。
その中心的施設のひとつが「川越総合地方卸売市場(川越市場)」です。しかし、物流や流通環境の変化は著しく、仲卸業者や入場業者の減少、消費行動の多様化など、市場の役割が問われる時代になっています。
今回の質問では、以下の観点から現状と課題を整理し、今後の方向性を探りました。
1.川越市場の設立経緯と市の関わり
まず、市場の開設経緯と川越市の立ち位置を確認しました。
川越市場は、埼玉県卸売市場整備計画に基づき平成6年に開場
目的は「生鮮食料品の安定供給」と「生産者の安定的販路の確保」
川越市は約68.8%を出資する筆頭株主で、狭山市(9.2%)、坂戸市(5.5%)など計13株主で構成
行政と民間が出資する第三セクター市場であり、市場と市はあくまで別組織
この確認を通じて、市場運営は民間主導である一方、市としての関与は極めて大きいことを再認識しました。
2.川越市場の現状と課題
次に、市場の現状を整理しました。
仲卸業者の減少
青果仲卸業者は過去20年で8社→4社
水産仲卸業者は26社→9社(約3分の1)
後継者不足や流通量減少、仕入先の多様化が背景
市場業績と利用者動向
経営は毎期黒字を維持
一般開放「お客様感謝市」は消費者に好評だが、来場者は令和3年度以降減少傾向
利用者・業者の意見
一般開放を評価する声
一方で、業者からは「仕入業者と一般客のすみ分け」「鮮度やブランドの維持」への懸念もあり
私はこの状況を踏まえ、関係者のビジョンや方向性が十分に共有されていないことを大きな課題と認識しました。
3.川越市場の強みと可能性
川越市場には明確な強みがあります。
県内3か所のみの水産市場の一つ
関越道ICに近い地理的優位性
青果・水産・食肉・関連事業が集まる総合市場であること
しかし、この強みを十分に生かしきれていない現状も見えてきました。観光資源としての期待、プロ向けブランド戦略、広域的な仕入拠点としての機能強化をどう両立させるかが鍵となります。
4.市場の未来に向けた提案
今回の質問を通して、私は以下の2点を強調しました。
ビジョンの共有と広域的な視点
市場の方向性を川越市の産業・観光ビジョンと連動させる
9市町の株主を含む広域連携で中長期の活性化策を進める
市場機能の強化と空き区画の有効活用
冷蔵・冷凍・衛生設備の整備で仲卸業者の生産性向上
見学ルート整備や一般客と業者のすみ分けでブランド価値を高める
千葉県の新生成田市場の事例に学び、物流変化に対応した市場づくりを進める
市場は、空き区画が生じた今こそ大きな転換点にあります。
まとめ
川越市場は、これまで30年間、地域の食を支えるインフラとして機能してきました。しかし、流通・消費・テクノロジーの変化により、求められる役割は大きく変わっています。
市場の強み(水産・総合市場・地理的優位)を生かす
広域的・中長期的なビジョンを関係者で共有する
空き区画を活用した機能強化により、新たな価値を創出する
これらを市としてしっかり後押しし、川越市場が地域経済と食文化を支える拠点であり続けるよう、私は今後も議会で提案と検証を続けてまいります。
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