top of page
検索

令和5年度川越市一般会計予算を質疑しました― コロナ後のまちづくりと持続可能な財政運営に向けて ―

令和5年2月定例会において、「令和5年度川越市一般会計予算(議案第26号)」に関する質疑に立ちました。今回の予算は、コロナ禍からの回復と人口減少時代の到来という大きな転換点に直面する中で編成されたものです。


1.コロナ後を見据えた予算の方向性

新型コロナウイルスは、令和5年度に感染症法上で「2類」から「5類」へ移行することが見込まれています。社会経済活動は徐々に回復する一方で、ウイルス自体は消えません。

今回の予算は、まさにコロナ後への移行期にあたるため、私は次の視点で質疑を行いました。

  1. 令和4年度から5年度への予算の変化はどう捉えているか

  2. 感染症法上の変更が市の予算に与える影響は何か

答弁では、

  • 感染拡大防止と社会活動の両立を図る予算編成

  • イベント開催や市民・事業者支援の継続

  • 道路・河川整備や公共施設改修の推進

  • 生活様式や企業活動の変化に合わせた柔軟な対応

が示されました。

私は、今後も感染症の状況や国の方針変更に応じ、市民生活に直結するニーズに的確に対応する予算執行を求めました。


2.市税と歳入の動向を丁寧に確認

次に、市の財政基盤となる市税や歳入の状況について質疑しました。これは、私たちのまちの将来を考えるうえで非常に重要な視点です。

市税の動向(過去5年間の推移)

  • 個人市民税

    • 令和元年度:220億円

    • 令和3年度:210億円(コロナ禍で減少)

    • 令和5年度:222億円(回復傾向)

  • 法人市民税

    • 令和元年度:44億円

    • 令和3年度:23億円(大幅減)

    • 令和5年度:38億円(持ち直し途中)

  • 固定資産税

    • 人口動向に影響されにくく、家屋の新増築により微増傾向

この結果、市税全体はコロナ前に近づいてきたものの、完全回復には至っていないことが確認できました。

自主財源と依存財源のバランス

令和5年度は、市債や県支出金などの依存財源が大きく増えたため、自主財源の割合が減少しました。

  • 市債は新宿町一丁目広場防災施設等の整備で約13億円増

  • 地方消費税交付金は景気持ち直しで約8億円増

  • 県支出金は道路整備や障害者福祉費の増で約6億円増

依存財源が増えることは、市の事業推進には有利な面がありますが、将来返済が必要な市債も含まれるため、中長期的には慎重な運営が必要です。


3.人口減少と市税の関係

質疑では、市税の回復が人口減少とどう関わるのかも確認しました。

  • 個人市民税は人口そのものより「納税義務者数」に影響される

  • 高齢者や女性の就業増により、当面は納税義務者が減らない見通し

  • ただし、長期的な人口減少が進めば市税減収につながる可能性あり

固定資産税も、家屋の新増築が減れば減収要因になります。私は、人口減少対策と財源確保は切り離せない課題だと改めて感じました。


4.歳出の特徴と物件費の増加

令和5年度予算の歳出では、物件費が前年度比7.9%増となりました。理由は以下の通りです。

  1. 原油・物価高騰による光熱水費の増加

    • 小学校運営管理:約2億8千万円増

    • 資源化センター運営管理:約1億7千万円増

  2. 新型コロナ感染症対策に係る委託料の増加

    • 令和4年9月開始の事務職員派遣委託

    • 自宅療養者への配食サービスの食材調達委託

今後も物価やエネルギー価格の動向が財政に影響を与えるため、計画的で柔軟な予算管理が不可欠です。


5.行財政改革の現状と課題

川越市は、令和3年度から7年度にかけて行財政改革推進計画を進めています。私は、中間年度となる令和5年度における進捗を質疑しました。

主な確認事項

  • 経常収支比率:令和3年度95.2% → 令和5年度は悪化見込み

  • 財政調整基金残高:年度末約7億円(計画最終年度は50億円目標)

  • 市単独事業の見直し効果:目標3億円に対し、780万円にとどまる

答弁では、

  • 事業は市民ニーズに応えて開始したものが多く、慎重な見直しが必要

  • 関係者への説明や理解を得るため、時間を要する場合がある

とされました。

私は、選択と集中の徹底と全庁的な意識共有が必要であり、補助金や事業対象者への丁寧な説明を通じて理解を得ながら進めるべきと訴えました。


6.新たな歳入確保の取り組み

持続可能な財政運営のためには、歳入の確保も欠かせません。

市は、以下の取り組みを進めています。

  • 債券運用の開始(令和4年度から)

  • ネーミングライツ導入の検討

  • 公有財産のさらなる利活用

ただし、即効性のある新規歳入は限られており、短期的には歳出の見直しが中心になる現状です。


7.過去の教訓を踏まえた財政運営

私は、過去のリーマンショック時の市税減収も確認しました。

  • 個人市民税:前年度比4.8%減

  • 法人市民税:前年度比34%減(翌年も15%減)

新型コロナ禍よりも落ち込み額は大きく、想定外の経済変動でも行政サービスを止めない備えの必要性を改めて強調しました。

ree

【まとめ】持続可能な市政へ向けて

今回の質疑を通して、私は次の課題を明確にしました。

  1. コロナ後の社会変化に柔軟に対応した予算執行

  2. 人口減少時代を見据えた安定財源の確保

  3. 選択と集中による市単独事業の見直し

  4. 財政調整基金に頼らない持続可能な財政運営

市民の皆さんに必要な行政サービスを守るため、私は引き続き、現場の課題と市政の意思決定をつなぐ役割を果たしてまいります。

 
 
 

最新記事

すべて表示
ケアラー支援は次のフェーズへ― 川越市は条例制定に踏み出すべきです ―

令和5年12月議会にて、「ケアラー支援の今後について」一般質問を行いました。私がケアラー支援について取り上げるのは、令和3年の初登壇以来、今回で3度目となります。特に今回は、国が重点施策として位置づけているヤングケアラー支援の集中取組期間(令和4~6年度)の最終年度にあたり...

 
 
 
川越市場の未来を考える ― 物流環境の変化と地域経済の要として

はじめに 令和5年9月議会において、「卸売市場の今後について」一般質問を行いました。川越市は商業・工業・農業のバランスが取れた産業構造を持ち、埼玉県西部の経済をリードしてきました。古くは新河岸川の舟運、明治以降の鉄道、近年では圏央道の開通など、川越は歴史的に物流の拠点として...

 
 
 
令和5年6月議会一般質問 ー川越市の地域医療を守るために

団塊世代が後期高齢者となる2025年を前に、川越市の地域医療体制をどのように強化するか。私は、令和5年6月議会で「地域医療と看護師確保」の課題について質問しました。 1. 2025年、地域医療はどう変わる? 日本は少子高齢化が進み、 2025年には団塊の世代が全員75歳以上...

 
 
 

Comments


川越市議会議員​ くらしま真史

〒350-0805 川越市広谷新町29-12

 

​©KURASHIMA_Masashi

bottom of page